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最高裁判所第一小法廷 昭和32年(オ)1081号 判決

福岡市東中州四一番地

上告人

きたのや有限会社

右代表者清算人

松隈福二

同市大名町

被上告人

福岡国税局長

右当事者間の法人税審査決定額に対する取消変更請求事件について、福岡高等裁判所が昭和三十二年八月九日云い渡した判決に対し上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人代表者松隈福二の上告理由について。

しかしながら、税理士法及び公認会計士法の所論法条は、税理士計理士の有資格者の指導の下に作成或は調製した所論のような書類ないしは帳簿の記載を必ずしも真実に合致するものと認めなければならないとの趣旨を規定しているものではない。

従つて原判決が所論書類及び帳簿における収入金額の記載が過少であつて、その記載内容は信頼するに足りないものであると断定したからといつて(原判決挙示の証拠によつて認定された事実関係に基くその判断は当裁判所もこれを是認する。)そこに前示法条に違背する違法ありというを得ない。所論はひつきよう判決に影響すること明白な法令違背を主張するものとは認められないから採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

○昭和三十二年(オ)第一〇八一号

上告人 きたのや有限会社

被上告人 福岡国税局長

上告人代表者松隈福一の上告理由

原判決には税理士法(第一条、第二条)公認会計士法(第六十三条、旧計理士法第一条、第二条)を看過したる法令の違背がある。

上告人は計理面、税法上の無知不馴のため法人税申告書(決算報告書、貸借対照表、損益計算書、甲第六号証、甲第七号証)の財務書類の調整並に計理諸帳簿(売上元帳甲第十三号証、金銭出納帳甲第十二号、各種出入金伝票甲第十一号証など)の記帳整備についてその指導を税理士、計理士の有資格者たる原審証人西島孫治に嘱託したのである。

然るに西島孫治は税理士法、計理士法の職責業務上から中正なる立場で納税義務の適正なる実現と正確適切なる帳簿記載についてこれが作成と指導を納税義務者の上告人に誠意をもつて責務を果したにも拘らず、納税申告書(前記の附属書類一切)と計理帳簿(売上元帳、金銭出納帳、各種伝票)の審査を全面的に軽視して、原審証人松隈アイが備忘のため記載せるメモ帳(甲第八号証)(個人、法人の混記しあることは一見して明瞭なり)のみをもつて一方的に過証し法人税課税の収入金額の決定資料と見做し、宿泊飲食税申告収入額との比率四、一二倍を乗したるものを法人税額の査定基準と推断するが如きは、税理士法(第一条、第二条)公認会計士法(旧計理士法第一条、第二条)の法令に成文明示ある職責業務を看過しての審理であつて、国民のための立法権を無視するが如き感と法律を軽視する思潮醸成に影響を及ぼすこと明らかなれば、法令違背の判決なりと主張するものである。

以上

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